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医療機器事例

■ 要約

血液検査機器の米大手のお客様は、欧州市場への新製品輸出にあたって、操作用タッチパネル、組み込み型ヘルプシステム、およびオペレーターマニュアルを欧州16ヶ国語に翻訳し、マーケティング部が設定した製品発売予定日までにすべて間に合わせるという課題に直面していた。欧州市場に医療機器を輸出するには、IVDDに基づくCEマークの取得が必須である。CEマークの取得には製品に付随するデータを輸出先のすべての国々の言語に翻訳しておく必要があり、翻訳が遅れれば製品発売日にずれが生じるという大きなリスクを抱えていた。J社は過去に翻訳の遅れが理由で欧州市場での製品発売日を遅らせるという苦い経験をしており、新製品の翻訳には翻訳工程管理に長けた十印を新しいパートナーとして選んでいただけました。

十印はJ社との工程改善共同プロジェクトを即立ち上げ、既存工程のボトルネックが社内レビューにあることを発見。社内レビューの工程を改善することに全力を注ぎ、16ヶ国語の翻訳をJ社のマーケティング部が設定した発売予定日に間に合わせることができました。

■ 課題

  • 欧州市場への多言語展開
  • 新製品の発売予定日までにCEマークを取得するための翻訳納期の厳守
  • 医療機器翻訳に必要な間違えのない品質とオペレーターを迷わせない情報の一貫性の提供
  • 工程改善能力

■ ソリューション

  • レビュー担当者の上司を巻き込んだレビュー方法の提言
  • 翻訳者とレビュー担当者のチーム制による翻訳とレビュー時間の短縮
  • レビュー担当者が使えるアプリケーションのみを使ったレビュー方法の考案
  • 翻訳メモリツールの変則的活用によるレビュー時間の短縮

■ 成果

  • CEマークの取得と製品発売予定日の出荷
  • レビュー工程の大幅な改善
  • HTMLおよびFrameMakerのソースデータに対し、レビュー担当者はMS WordとInternet Explorerのみを使ったレビューで翻訳メモリ構築のための一括レビューができる手法を実現
  • 工程改善により、見積価格から11%のコスト削減

■ レビュー担当者の上司を巻き込んだレビュー方法の提言

J社との工程改善共同プロジェクトの結果により、J社の社内レビューは管理がほとんどされておらず、各国のレビュー担当者は納期に関わらず自分の都合でレビュー結果を本社のプロジェクト管理者に戻していたことが明らかとなった。時にはレビューの依頼に対して全く反応しないレビュー担当者もいた。原因は、レビュー担当者は自分の仕事を別に持っており、上司からもそちらを優先するように指示されていたことにあった。法務部からの指示により、レビューされていない翻訳は出荷することは許されておらず、新製品の成功が会社の業績に大きく影響することを知っていた十印はJ社のマネージャーを通して副社長レベルからトップダウンでレビュー担当者とその上司にレビューの優先順位を上げることを通知してもらった。一方で、レビュー担当者とその上司と顔を合わせて会議をし、協力を得ることに合意を得た。上司からの理解と支援を受けることとなったレビュー担当者の反応は、その後急速に改善された。

■ 翻訳者とレビュー担当者のチーム制による翻訳とレビュー時間の短縮

従来であればベンダー側の翻訳者とクライアント側のレビュー担当者は両サイドのプロジェクト管理者を介してコミュニケーションしていたが、十印は両者が直接コミュニケーションをとることを提言。まず、各言語の翻訳者数人とレビュー担当者をペアとして用語集と執筆基準書を作成し、翻訳者が製品や新しい用語に対して質問がある場合はレビュー担当者に直接コンタクトできる仕組みを作った。これにより、翻訳者の製品に関する学習期間は飛躍的に短縮され、レビュー担当者は製品知識のある翻訳者がすでに合意している用語集と執筆基準に基づいて仕上げた翻訳を見直すことが可能になり、翻訳にかかる時間もレビューにかかる時間も、レビュー後の修正にかかる時間も大幅に短縮することができた。

■ レビュー担当者が使えるアプリケーションのみを使ったレビュー方法の考案と翻訳メモリツールの変則的活用によるレビュー時間の短縮

タッチパネル画面とヘルプシステムのデータはHTML形式、マニュアルはFrameMakerで作成されていた。翻訳メモリツールはTRADOSを使用したが、レビュー担当者はこの3つのファイル形式の知識はなく、作業工程を統一するにはMS Wordでレビューし、コメントもMS Wordに入力する必要があった。しかし、翻訳メモリの更新と元のファイル形式への変換に時間を掛けるわけには行かないといった課題も残された。また、チーム制によって翻訳の質がレビュー担当者の満足いくレベルに上がり、レビュー時間を短縮することはできても、それだけではもうひとつの課題である品質の一貫性を保つことはできない。数百というファイルを複数の翻訳者が同時に翻訳していく工程では、レビュー担当者はひとつの変更が同じ単語、同じ文書であれば、数百のファイルに自動的に変更が反映されなければならなかった。多言語コンテンツ管理システムが脚光を浴び始める以前の2002年のことである。

このチャレンジに対して十印が提案したソリューションは、翻訳が終わった時点で翻訳メモリ内のデータをすべてRTF形式にエクスポートし、それをMS Word上でレビュー担当者にレビューしてもらうというやり方だった。レビュー担当者が変更したい箇所を見つけると、同じ単語、言い回しがエクスポートされた翻訳メモリ内にないか確認し、あればそこも変更していった。変更履歴をオンにしておき、後で翻訳者や規制関連担当者が変更箇所の確認ができるようにした。また、レビュー担当者がタグを消してしまわないようにプロテクションを掛けたが、この作業は時間のかかるものではなかった。こうしてMS Word上でレビューされたデータで新規の翻訳メモリを作成し、ソースデータを一括翻訳することで、レビュー担当者が一度変更した部分が数百のファイルのどこにあっても一貫して自動的に変更できる仕組みができた。HMTLとFrameMakerをMS Wordに変換する必要もなくなった。J社の改善へのコミットメントと十印の工程管理能力および技術を実用に向けて応用する力が合わさって、J社は無事発売予定日に新製品を出荷できる体制を整えることができた。


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