金融事例
■ 要約
ファイナンシャルアドバイザーで有名な米大手企業のお客様が日本市場進出の準備として日本の金融会社数社から将来のファイナンシャルアドバイザーを数十名採用し、米国で培ったノウハウをトレーニングを通して学ばせ、日本に新たな市場を開拓しようと計画していました。米国で数年使われていたトレーニング用教材は実績につながるものとしてA社も自信を持っていたが、日本語に翻訳しなければ日本人ファイナンシャルアドバイザーには伝わらないとして、翻訳の依頼を十印にと連絡してきました。
単に翻訳するだけではトレーニングは成功しないと感じた十印のプロジェクト管理者の機転により、翻訳に加え、トレーニング教材の日本への順応を提案。翻訳と書き起こしの同時進行で顧客の期待するトレーニング教材を作り上げることができました。
■ 課題
- 日本人ファイナンシャルアドバイザーのトレーニング
- 米国市場向けに作られた英語版教材の日本への適応
- 日本では比較的新しいコンセプトのファイナンシャルアドバイザーというサービスにまつわる用語の定義
■ ソリューション
- アメリカ人による英語でのトレーニングではなく、日本人のチームリーダーがトレーニングをするやり方の提言
- 翻訳する部分と日本語で書き起こす部分とを分けた同時進行型工程
- 熟練翻訳者とクライアントのチームリーダーの協力による用語の定義
■ 成果
- 日本人ファイナンシャルアドバイザーに受け入れられたトレーニングの実現
- 翻訳メモリ内のデータベース蓄積による翻訳テキストの再利用効果
■ 翻訳だけではだめかも...
十印がA社から翻訳の依頼を受け、トレーニング用の教材に最初に目を通したときのプロジェクト管理者の反応である。教材の内容に米国金融業界の法律や商習慣への参照が多くあり、日本人にはピンとこない。さらに、トレーニングの進め方も小グループに分かれて意見を交わした後でクラス全体に発表といった米国式のトレーニング進行法などが採用されており、講師が一方的に教えるといったスタイルに慣れた日本人には馴染めそうにない。そこで、翻訳できる部分と日本人に馴染みのない内容とに分け、馴染みのない部分は翻訳せずに日本語で書き起こすことを提案。
■ 翻訳は翻訳メモリツールの力を十分に発揮
金融であれどの業界であれ、トレーニング用教材は概して反復する文が多い。教材全体の初期解析の結果を見ても工程の組み立て方によっては、全体の50%は反復する文か単語レベルの変更を加えるだけで翻訳が終了できることがわかった。翻訳メモリツールのTRADOSを使用し、金融分野の熟練翻訳者が反復する文を一度翻訳し、その翻訳文をTRADOSによって自動的に再利用するやり方でコストと時間を削減する一方で文章の一貫性を保つことに成功した。翻訳の基本単位となる用語は、熟練翻訳者とクライアントのチームリーダーが協力して用語集を作成し、翻訳の品質維持に努めた。
■ 書き起こし部分はクライアントとの共同作業
日本人ファイナンシャルアドバイザーに馴染みのある事例を盛り込むことで、トレーニングの受け手が真に内容を理解できる教材づくりを目指す十印チームは、事例をたくさん持つクライアント側に事例の提出を依頼し、それを基に書き起こし作業を開始した。また、トレーニングの進行法に対して疑問が出た場合は、クライアントの日本チームと米国チームと協議の上、指導方法の変更を教材に反映していった。米国本社の法務部からはサービスの内容の記述などで訴訟問題を回避するために変更してはならない内容もリストアップしてもらい、その部分には「米国法による」という注釈も入れることにした。
翻訳と書き起こしのハイブリッド教材ができあがり、日本人チームリーダーがトレーニングの教壇に立つことで、初めての試みだった日本人ファイナンシャルアドバイザーのトレーニングは大成功に終わった。その後、何度かの変更が教材に加えられたが、翻訳メモリの活用によって新しく翻訳が必要な部分は全体の二割弱に抑えることができた。また、トレーニングを終えて実際に現場に出て行ったファイナンシャルアドバイザーが客先資料として必要とした文書もトレーニングで使用した文書に似ていたため、翻訳メモリを活用して短期で一貫性のある文書を作成できるという副産物を得ることもできた。